雇用形態の変更に関し禁止される措置の例
1 雇用形態の変更に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。
(排除していると認められる例)
① 有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更の対象を男性労働者のみとすること。
② パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験について、その受験資格を男女のいずれかに対してのみ与えること。
2 雇用形態の変更に当たっての条件を男女で異なるものとすること。
(異なるものとしていると認められる例)
① 女性労働者についてのみ、婚姻又は子を有していることを理由として、有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更の対象から排除すること。
② 有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更について、男女で異なる勤続年数を条件とすること。
③ パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更について、男女のいずれかについてのみ、一定の国家資格の取得や研修の実績を条件とすること。
④ パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験について、女性労働者についてのみ上司の推薦を受けることを受験の条件とすること。
3 一定の雇用形態への変更に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。
(異なる取扱いをしていると認められる例)
① 有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験の合格基準を男女で異なるものとすること。
② 契約社員から正社員への雇用形態の変更について、男性労働者については、人事考課において平均的な評価がなされている場合には変更の対象とするが、女性労働者については、特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。
③ パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験の受験について、男女のいずれかに対してのみ奨励すること。
④ 有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験の受験について、男女のいずれかについてのみその一部を免除すること。
4 雇用形態の変更に当たって、男女のいずれかを優先すること。
(優先していると認められる例)
パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更の基準を満たす労働者の中から、男女のいずれかを優先して雇用形態の変更の対象とすること。
5 雇用形態の変更について、男女で異なる取扱いをすること。
(異なる取扱いをしていると認められる例)
① 経営の合理化に際して、女性労働者のみを、正社員から賃金その他の労働条件が劣る有期契約労働者への雇用形態の変更の勧奨の対象とすること。
② 女性労働者についてのみ、一定の年齢に達したこと、婚姻又は子を有していることを理由として、正社員から賃金その他の労働条件が劣るパートタイム労働者への雇用形態の変更の勧奨の対象とすること。
③ 経営の合理化に当たり、正社員の一部をパート労働者とする場合において、正社員である男性労働者は、正社員としてとどまるか、又はパートタイム労働者に雇用形態を変更するかについて選択できるものとするが、正社員である女性労働者については、一律パートタイム労働者への雇用形態の変更を強要すること。
退職の勧奨に関し禁止される措置の例
1 退職の勧奨に当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。
(男女のいずれかのみとしていると認められる例)
女性労働者に対してのみ、経営の合理化のための早期退職制度の利用を働きかけること。
2 退職の勧奨に当たっての条件を男女で異なるものとすること。
(異なるものとしていると認められる例)
① 女性労働者に対してのみ、子を有していることを理由として、退職の勧奨をすること。
② 経営の合理化に際して、既婚の女性労働者に対してのみ、退職の勧奨をすること。
3 退職の勧奨に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。
(異なる取扱いをしていると認められる例)
経営合理化に伴い退職勧奨を実施するに当たり、人事考課を考慮する場合において、男性労働者については最低の評価がなされている者のみ退職の勧奨の対象とするが、女性労働者については特に優秀という評価がなされている者以外は退職の勧奨の対象とすること。
4 退職の勧奨に当たって、男女のいずれかを優先すること。
(優先していると認められる例)
① 男性労働者よりも優先して、女性労働者に対して退職の勧奨をすること。
② 退職の勧奨の対象とする年齢を女性労働者については45 歳、男性労働者については50歳とするなど男女で差を設けること。
定年に関し禁止される措置の例
1 定年の定めについて、男女で異なる取扱いをすること。
(異なる取扱いをしていると認められる例)
① 定年年齢の引上げを行うに際して、厚生年金の支給開始年齢に合わせて男女で異なる定年を定めること。
② 定年年齢の引上げを行うに際して、既婚の女性労働者についてのみ、異なる定年を定めること。
解雇に関し禁止される措置の例
1 解雇に当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。
(男女のいずれかのみとしていると認められる例)
経営の合理化に際して、女性のみを解雇の対象とすること。
2 解雇の対象を一定の条件に該当する者とする場合において、当該条件を男女で異なるものとすること。
(異なるものとしていると認められる例)
① 経営の合理化に際して、既婚の女性労働者のみを解雇の対象とすること。
② 一定年齢以上の女性労働者のみを解雇の対象とすること。
3 解雇に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準に
ついて男女で異なる取扱いをすること。
(異なる取扱いをしていると認められる例)
経営合理化に伴う解雇に当たり、人事考課を
考慮する場合において、男性労働者については最低の評価がなされている者のみ解雇の対象とするが、女性労働者については特に優秀という評価がなされている者以外は解雇の対象とすること。
4 解雇に当たって、男女のいずれかを優先すること。
(優先していると認められる例)
解雇の基準を満たす労働者の中で、男性労働者よりも優先して女性労働者を解雇の対象とすること。
労働契約の更新(雇止め)に関し禁止される措置の例
1 労働契約の更新に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。
(排除していると認められる例)
経営の合理化に際して、男性労働者のみを、労働契約の更新の対象とし、女性労働者については、労働契約の更新をしない(いわゆる「雇止め」をする)こと。
2 労働契約の更新に当たっての条件を男女で異なるものとすること。
(異なるものとしていると認められる例)
① 経営の合理化に際して、既婚の女性労働者についてのみ、労働契約の更新をしない(いわゆる「雇止め」をする)こと。
② 女性労働者についてのみ、子を有していることを理由として、労働契約の更新をしない(いわゆる「雇止め」をする)こと。
③ 男女のいずれかについてのみ、労働契約の更新回数の上限を設けること。
3 労働契約の更新に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方
法や基準について男女で異なる取扱いをすること。
(異なる取扱いをしていると認められる例)
労働契約の更新に当たって、男性労働者については平均的な営業成績である場合には労働契約の更新の対象とするが、女性労働者については、特に営業成績が良い場合にのみその対象とすること。
4 労働契約の更新に当たって男女のいずれかを優先すること。
(優先していると認められる例)
労働契約の更新の基準を満たす労働者の中から、男女のいずれかを優先して労働契約の更新の対象とすること。
Q&A
Q1例えば、3交替制の深夜業がある事業場で、希望する女性以外、女性は3交替
制の職務に就けないとした場合、均等法第6条違反となるのでしょうか。
本件については、一定の職務への配置について、男性は全員を対象とするが、女性は希望者のみを対象にしていることになり、均等法第6条に違反します。
なお、個々の労働者の健康や家庭責任の状況を理由として他の労働者と異なる取扱いをすることは均等法上の問題となるものではありませんが、その場合においても、一方の性の労働者に対してのみ個々の労働者の状況などを勘案することは、均等法違反となります。
Q2当社では「一般職」社員を対象に窓口業務研修を行っています。「一般職」はほとんどが女性ですが、このような研修は、均等法では禁止されているのでしょうか。
均等法では、労働者の教育訓練について、性別を理由として差別的取扱いをすることは禁止されており、研修を行うに当たって、女性労働者のみを対象とすることはこれに該当します。しかし、「一般職」社員を窓口業務研修の対象としているという場合に、「一般職」がほとん
ど女性であるために結果として研修の受講者のほとんどが女性社員となったとしても、均等法違反とはなりません。また、「女性労働者に係る措置に関する特例」(均等法第8条、P.24 ~ 26)に該当する場合は、均等法違反とはなりません。
Q3扶養手当の支給対象者を世帯主としています。このような取扱いは均等法上禁
止されるのでしょうか。社宅の入所者を世帯主とすることはどうでしょうか。また、妻帯者とすることは問題でしょうか。
扶養手当は「賃金」と認められ、労働基準法第4条により女性であることを理由として男性
と差別的取扱いをすることが禁止されています。また、社宅の貸与は均等法上性別を理由とした差別的取扱いが禁止される福利厚生に含まれるものです。次に、扶養手当の支給対象者や社宅の入居者の要件を「世帯主」とすることは、性別を理由とした差別的取扱いをしていることにはなりません。
しかしながら、「世帯主」の決定に当たって、女性について男性に比して不利な条件を課した場合などは、性別を理由とする差別的取扱いに該当します。「世帯主」の決定に当たってそのような条件を課せば、扶養手当については労働基準法第4条に、社宅の貸与については均等法第6条に違反することになります。
また、対象を「妻帯者」とすることは、供与の対象から女性が排除されることとなりますので、扶養手当の支給の対象を「妻帯者」とすれば労働基準法第4条に、社宅の貸与の対象を「妻帯者」とすれば均等法第6条に違反します。
(参考)配偶者手当の在り方の検討に向けて
リーフレット:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000163186.pdf厚生労働省ホームページ 政策について → 分野別の政策一覧 → 雇用・労働 → 労働基準 → 賃金 → 配偶者手当の在り方の検討
Q4女性のみに制服を支給することは禁止されるのでしょうか。
均等法第6条で労働者の性別を理由として、差別的取扱いが禁止される福利厚生の措置は、住宅資金の貸付けのほか、厚生労働省令で定める事項に限られ、その中には制服を支給することは含まれていません。したがって、制服の支給については、均等法上の問題とはなりません。
ただし、一般的に、均等法第6 条の趣旨に照らせば、女性に対してのみ制服を支給することに合理的な理由は認められないと考えられ、制服については、男女とも支給しない、男女とも希望者に支給するなど、男女で同一の取扱いをすることが望ましいといえます。
法違反とならない場合
次に掲げる場合において、指針(「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」)において掲げる措置を講ずることは、性別にかかわりなく均等な機会を与えていない、又は性別を理由とする差別的取扱いをしているとは解されず、均等法第5条及び第6条の規定に違反することとはなりません。
⑴ 次に掲げる職務に従事する労働者に係る場合
(業務の正常な遂行上、一方の性でなければならない職務に限られます。単に、一方の性に適していると考えられているだけでは該当しません)
① 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務
② 守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職務
③ ①及び②に掲げるもののほか、宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上その他の業務の性質上男女のいずれかのみに従事させることについてこれらと同程度の必要性があると認められる職務
⑵ 労働基準法第64 条の2若しくは第64 条の3第2項の規定により女性を就業させることができず、又は保健師助産師看護師法第3条の規定により男性を就業させることができないことから、通常の業務を遂行するために、労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与え又は均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合
⑶ 風俗、風習等の相違により男女のいずれかが能力を発揮し難い海外での勤務が必要な場合その他特別の事情により労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与え又は均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合
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