2019年10月29日火曜日

厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進(各事業者向けガイドラインについて)-2

第2 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方
(1)不当な差別的取扱い
①不当な差別的取扱いの基本的考え方
法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、サービス等
の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者
でない者に対しては付さない条件を付するなどにより、障害者の権利利益を
侵害することを禁止しています。
なお、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措
置は、不当な差別的取扱いではないことに留意する必要があります。
したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積
極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害
者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供するために必要な範囲で、
プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差
別的取扱いには当たりません。
不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事
業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うこ
とです。
②正当な理由の判断の視点
不当な差別的取扱いであるのかどうかの判断には、その取扱いを行う正当
な理由の有無が重要となります。正当な理由に相当するのは、障害者に対し
て、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取
扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照ら
してやむを得ないと言える場合です。
正当な理由に相当するか否かについて、事業者は、個別の事案ごとに、障害
者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・
内容・機能の維持、損害発生の防止など)の観点に鑑み、具体的場面や状況に
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応じて総合的・客観的に判断することが必要であり、事業者は、正当な理由が
あると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得る
よう努めることが望まれます。
なお、「客観的に判断する」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、
その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得
を得られるような「客観性」が必要とされるものです。
また、「正当な理由」を根拠に、不当な差別的取扱いを禁止する法の趣旨が
形骸化されるべきではなく、抽象的に事故の危惧がある、危険が想定される
といった理由によりサービスを提供しないといったことは適切ではありませ
ん。
(2)合理的配慮
①合理的配慮の基本的な考え方
<合理的配慮とは>
権利条約第2条において、合理的配慮は、「障害者が他の者との平等を基礎
として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するため
の必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるも
のであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されて
います。
法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、事業者に対し、その事
業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を
必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が
過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的
障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」とい
う。)を行うことを求めています。
合理的配慮は、事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範
囲で本来の業務に付随するものに限られ、障害者でない者との比較において同
等の機会の提供を受けるためのものであり、事業の目的・内容・機能の本質的
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な変更には及びません。
合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状
況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置か
れている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について様々
な要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を
通じ、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされるものです。合理的配慮の
内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変遷することにも留意すべき
です。
<意思の表明>
意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する
配慮を必要としている状況にあることを、言語(手話を含む。)のほか、点字、
拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝
達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介
するものを含む。)により伝えられます。
また、障害者からの意思の表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害
を含む。)等により本人からの意思の表明が困難な場合には、障害者の家族、
支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補
佐して行う意思の表明も含まれます。
なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者等を伴っていな
いことなどにより、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障
壁の除去を必要としていることが明白であるときには、法の趣旨に鑑みれば、
当該障害者に対して適切と思われる配慮を提供するために自主的に取り組む
ことが望まれます。
<環境整備との関係>
法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわ
ゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関のバリアフリー化、意思表示
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やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者・支援者等の人的支
援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリテ
ィの向上等)については、個別の場合において、個々の障害者に対して行われ
る合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとして
います。
新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともある
ことから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待されています。また、環境の
整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修等のソフト面の対応も含ま
れることが重要です。
障害者差別の解消のための取組は、このような環境の整備を行うための施策
と連携しながら進められることが重要であり、ハード面でのバリアフリー化施
策、情報の取得・利用・発信における情報アクセシビリティ向上のための施策、
職員に対する研修等、環境の整備の施策を着実に進めることが必要です。
合理的配慮は、上述の、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物の
バリアフリー化、支援者・介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上
等の環境の整備を基礎として、その上で、個々の障害者に対して、その状況に
応じて個別に実施される措置です。従って、各場面における環境の整備の状況
により、合理的配慮の内容は異なることとなります。また、障害の状態等が変
化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合には、提
供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要です。
②過重な負担の基本的な考え方
過重な負担については、事業者において、具体的な検討をせずに過重な負担
を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下
の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断すること
が必要であり、過重な負担に当たると判断した場合、障害者にその理由を説明
するものとし、理解を得るよう努めることが望まれます。
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*事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
当該措置を講ずることによるサービス提供への影響、その他の事業への影響の程度。
*実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
事業所の立地状況や施設の所有形態等の制約にも応じた、当該措置を講ずるための
機器や技術、人材の確保、設備の整備等の実現可能性の程度。
*費用・負担の程度
当該措置を講ずることによる費用・負担の程度。複数の障害者から合理的配慮に関
する要望があった場合、それらの複数の障害者に係る必要性や負担を勘案して判断
することとなります。
*事務・事業規模
当該事業所の規模に応じた負担の程度。
*財務状況
当該事業所の財務状況に応じた負担の程度。

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