2019年10月29日火曜日

厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進(各事業者向けガイドラインについて)-1



福祉事業者向けガイドライン
福祉分野における事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する対応指針(平成27年11月11日厚生労働大臣決定)

~福祉分野における事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する対応指針~

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第1 趣旨
(1)障害者差別解消法制定の経緯
近年、障害者の権利擁護に向けた取組が国際的に進展し、平成18 年に国連
において、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、並びに障害者の固有
の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権
利に関する条約(以下「権利条約」という。)が採択されました。我が国は、平
成19 年に権利条約に署名し、以来、国内法の整備を始めとする取組を進めて
きました。
権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあら
ゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的
その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び
基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は
効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理
的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国に全て
の適当な措置を求めています。
我が国においては、平成16 年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)
の改正において、障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示され、さ
らに、平成23 年の同法改正の際には、権利条約の趣旨を踏まえ、同法第2条
第2号において、社会的障壁について、「障害がある者にとつて日常生活又は社
会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その
他一切のものをいう。」と定義されるとともに、基本原則として、同法第4条第
1項に、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の
権利利益を侵害する行為をしてはならない」こと、また、同条第2項に、「社会
的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に
伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反する
こととならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければ
ならない」ことが規定されました。
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■ 障害者差別解消法関係の経緯
平成 16 年 6 月 4 日 障害者基本法改正
※ 施策の基本的理念として差別の禁止を規定
平成 18 年12 月13 日 第61 回国連総会において障害者権利条約を採択
平成 19 年 9 月 28 日 日本による障害者権利条約への署名
平成 23 年 8 月 5 日 障害者基本法改正
※ 障害者権利条約の考え方を踏まえ、合理的配慮の概
念を規定
平成 25 年 4 月26 日 障害者差別解消法案閣議決定、国会提出
6 月26 日 障害者差別解消法 公布・一部施行
平成 26 年 1 月20 日 障害者の権利に関する条約締結
平成 27 年 2 月24 日 障害者差別解消法「基本方針」閣議決定
平成 28 年 4月 1日 障害者差別解消法施行(予定)
【参考ページ】
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障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25 年法律第65 号。
以下「法」という。)は、障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するも
のであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互
に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解
消を推進することを目的として、平成25 年6月に制定されました。我が国は、
法の制定を含めた一連の障害者施策に係る取組の成果を踏まえ、平成26 年1
月に権利条約を締結しました。
法は、平成28 年4月1日から施行されることになっています。
(2)対象となる障害者
対象となる障害者・障害児(以下「障害者」という。)は、障害者基本法第2
条第1号に規定する障害者、すなわち、「身体障害、知的障害、精神障害(発達
障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある
者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当
な制限を受ける状態にあるもの」です。
これは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、身体障害、
知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起
因する障害を含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と
相対することによって生ずるというモデル(いわゆる「社会モデル」)の考え方
を踏まえているものです。したがって、法が対象とする障害者は、いわゆる障
害者手帳の所持者に限りません。なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれて
います。
また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、さら
に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障
害者とは異なる支援の必要性があることに留意する必要があります。


■ 障害者権利条約とは
障害者権利条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の
尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等につい
て定めた条約です。
2006(平成18)年12 月13 日に国連総会において採択され、2008(平成20)年5
月3 日に発効しました。我が国は2007(平成19)年9 月28 日に条約に署名し、2014
(平成26)年1 月20 日に批准書を寄託しました。また、同年2 月19 日に同条約は
我が国について効力を発生しました。
この条約の主な内容としては、以下のとおりです。
(1)一般原則
障害者の尊厳、自律及び自立の尊重、無差別、社会への完全かつ効果的な参加
及び包容等
(2)一般的義務
合理的配慮の実施を怠ることを含め、障害に基づくいかなる差別もなしに、す
べての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及
び促進すること等
(3)障害者の権利実現のための措置
身体の自由、拷問の禁止、表現の自由等の自由権的権利及び教育・労働等の社
会権的権利について締約国がとるべき措置等を規定。社会権的権利の実現につい
ては漸進的に達成することを許容
(4)条約の実施のための仕組み
条約の実施及び監視のための国内の枠組みの設置。障害者の権利に関する委員
会における各締約国からの報告の検討

(3)障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針
法第6条第1項の規定に基づき、「障害を理由とする差別の解消の推進に関す
る基本方針」(平成27 年2月24日閣議決定。以下「基本方針」という。)が
策定されました。
基本方針は、障害を理由とする差別の解消の推進は、雇用、教育、医療、公
共交通等、障害者の自立と社会参加に関わるあらゆる分野に関連し、各府省の
所掌に横断的にまたがる施策であるため、政府として、施策の総合的かつ一体
的な推進を図るとともに、行政機関間や分野間における取組のばらつきを防ぐ
ため、施策の基本的な方向等を示したものです。
(4)福祉分野における対応指針
法第11 条第1項の規定に基づき、主務大臣は、基本方針に即して、事業者
が法第8条に規定する事項に関し、適切に対応するために必要な指針(以下「対
応指針」という。)を定めることとされています。
本指針は、上に述べた法の目的を達成するため、特に福祉分野に関わる事業
者の対応指針を定めたものです。
本指針において定める措置については、「望まれます」と記載されている内容
等法的義務ではないものも含まれますが、法の目的を踏まえ、具体的場面や状
況に応じて柔軟な対応を積極的に行うことが期待されるものです。
なお、事業者は、障害を理由とする差別を解消するための取組を行うに当た
り、法、基本方針及び本指針に示す項目のほか、各事業に関連する法令等の規
定を順守しなければなりません。
また、福祉の専門知識及び技術をもって福祉サービスを提供する事業者は、
日頃から、障害に関する理解や障害者の人権・権利擁護に関する認識を深める
とともに、より高い意識と行動規範をもって障害を理由とする差別を解消する
ための取組を進めていくことが期待されます。

■ 本指針に関する障害者差別解消法の参照条文
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25 年法律第65 号)
(目的)
第1条 この法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者で
ない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふ
さわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推
進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消す
るための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全て
の国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合い
ながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
第6条 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実
施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針を定めなければならな
い。
2~6 (略)
(事業者における障害を理由とする差別の禁止)
第8条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差
別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としてい
る旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害
者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に
応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなけれ
ばならない。
(事業者のための対応指針)
第11 条 主務大臣は、基本方針に即して、第8条に規定する事項に関し、事業者が適切に対
応するために必要な指針を定めるものとする。
2 (略)
(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)
第12 条 主務大臣は、第8条の規定の施行に関し、特に必要があると認める時は、対応指針
に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告を
することができる。

本指針の対象となる福祉事業者の範囲は、社会福祉法(昭和26 年法律第45
号)第2条に規定する社会福祉事業その他の福祉分野に関わる事業を行う事業
者です。
「本指針の対象となる福祉事業者」
・生活保護関係事業(救護施設、更生施設などを経営する事業など)
・児童福祉、母子福祉関係事業(乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、
障害児入所施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設を経営する
事業、障害児通所支援事業、障害児相談支援事業、保育所、婦人保護施設、
母子・父子福祉施設など)
・老人福祉関係事業(養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを経営する事
業、老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業など)
・障害福祉関係事業(障害者支援施設を経営する事業、障害福祉サービス事
業、身体障害者生活訓練等事業、補装具製作施設など)
・隣保事業
・福祉サービス利用援助事業 など
なお、基本方針において、「事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共
団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み、国、独立行政法
人等、地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり、
目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意
思をもって行う者である。したがって、例えば、個人事業者や対価を得ない無
報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も
対象となる。」と規定されています。

本指針の対象となる福祉事業者の範囲は、社会福祉法(昭和26 年法律第45
号)第2条に規定する社会福祉事業その他の福祉分野に関わる事業を行う事業
者です。
「本指針の対象となる福祉事業者」
・生活保護関係事業(救護施設、更生施設などを経営する事業など)
・児童福祉、母子福祉関係事業(乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、
障害児入所施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設を経営する
事業、障害児通所支援事業、障害児相談支援事業、保育所、婦人保護施設、
母子・父子福祉施設など)
・老人福祉関係事業(養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを経営する事
業、老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業など)
・障害福祉関係事業(障害者支援施設を経営する事業、障害福祉サービス事
業、身体障害者生活訓練等事業、補装具製作施設など)
・隣保事業
・福祉サービス利用援助事業 など
なお、基本方針において、「事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共
団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み、国、独立行政法
人等、地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり、
目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意
思をもって行う者である。したがって、例えば、個人事業者や対価を得ない無
報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も
対象となる。」と規定されています。

注)事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措
置については、法第13 条により、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35 年法律第123
号)の定めるところによることとされており、同法に基づき別途定められた「障害者差別禁止指
針(※1)」及び「合理的配慮指針(※2)」を参照してください。
※1 「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」
(平成27 年厚生労働省告示第116 号)
※2 「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の
有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」
(平成27 年厚生労働省告示第117 号)

■ 国の「基本方針」に定められた「対応指針」に関する規定
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27 年2 月24 日閣議決定)
Ⅳ 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
2 対応指針
(1)対応指針の位置付け及び作成手続
主務大臣は、個別の場面における事業者の適切な対応・判断に資するための対応指針を
作成するものとされている。作成に当たっては、障害者や事業者等を構成員に含む会議の
開催、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を
反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成後は、対応指針を公表しなければな
らない。
なお、対応指針は、事業者の適切な判断に資するために作成されるものであり、盛り込
まれる合理的配慮の具体例は、事業者に強制する性格のものではなく、また、それだけに
限られるものではない。事業者においては、対応指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じ
て柔軟に対応することが期待される。
(2)対応指針の記載事項
対応指針の記載事項としては、以下のものが考えられる。
①趣旨
②障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方
③障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例
④事業者における相談体制の整備
⑤事業者における研修・啓発
⑥国の行政機関(主務大臣)における相談窓口

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